エンターテイメントとしての音楽は終わり。
「ゆの里」にふさわしい「音浴び」を提供したいのです。

新しいCDを持っているのがACOONさん。右のAWAYAさんに出会って音の世界がまた広がったようです。

いま、528Hz(ヘルツ)の演奏者といえば、真っ先に名前があがるほど著名な音楽家がACOON HIBINO(エイコン ヒビノ)さんです。
「愛の周波数528Hz」シリーズとしてCDも数多く出し、その中には、オリジナル曲に加え、クラシックやポップスを528Hzに調律しなおして編曲したものもあり、初心者にも入りやすいヒーリングミュージックになっています。
そのACOONさんが、ほんとうにやりたかった音の世界が今回、持参された『水森 WATER FOREST KUMANO』と題されたもの。
これまでの528Hzシリーズとは一線を画した「音」の世界は、AWAYA/あわ屋さんという2人のサウンドアートユニットを加え、自然界の音を取り込んだおだやかな世界をつくり上げています。そして、ACOONさんは、「ゆの里」でこの音を浴びる会を催したいと提案します。
(聞き手・永島美奈子)

 ジャズやポップスなどあらゆるジャンルの音楽に携わっていたACOONさんが、行き着いた先が528Hzの音の世界でした。528Hzの周波数の響きを生かした音楽活動を本格的にはじめたのは2013年から。
「前々から、いまの音楽がなにか違うとずっと思っていました。音づくりが違うというか。この音には絶対に行かないだろうという音で表現されているから、僕に言わせたら無理やり勝手につくっている音としか思えなかったのです」
 ちなみにHz(ヘルツ)とは周波数の単位のこと。主に音・光・電波も周波数で捉えられ、一秒間に繰り返される波(山と谷の組)の数で、528Hzということは、一秒間に528回波打って振動している音ということです。
 いまの音楽のほとんどは、A(ラの音)を440Hzにして、1オクターブを均等に12で割り振ったものです。これは、音の調和を考えているというより、均等に配置することを優先してつくられたもので、平均律と呼ばれている音階。なじみがあるものでいえば、ドレミファソラシドがその音階です。
 音階にはもう一つ純正律と呼ばれるものがあって、1オクターブに8つの音が置かれて、ひとつの音を弾いても、倍音という1オクターブ上の音が同時に響きあう鳴り方をするそうです。
 ACOONさんに言わせると、この「倍音」が自然界の道理で、地球上で発せられる音のルール。528Hzの音の世界です。
 「風がなびいている音も、水がポトンと鳴る音も、倍音で構成されています。古来、音楽はこの倍音の元に考えられていて、キリスト教の教会などで聖歌隊によって演奏されてきました。そのころは、平均律という考えはなく、人々は癒しと神の奇跡を求めて教会に通ってきたのです。ところが今から200年ほど前に産業革命が起こり、音楽が売り物として扱われる時代が始まりました。音楽がライブではなくても再現可能な時代になったのです。音楽が売り物になるためには、その音楽を聴いて心奪われ、ファンが増えることにより、ビジネスになることが必要になりました。そこで、音楽関係者が目をつけたのが、倍音が出にくい交感神経を刺激しやすいチューニングでした。なぜなら、そのチューニングこそが交感神経を高めたからです」
 興奮し、鼓舞する音楽。ある時代ではノイズが多い音楽が意識的に洗脳させやすい音楽として、440Hzの音楽が政治的に作られた歴史もあるようです。
 「いまは、コンサートのライブでさえ、最初から盛り上がらないと損。感動することを求めますよね。テレビでいろいろな音があふれて、カフェや街中でも音があふれている。これは、絶えず交感神経を優位になる音に包まれているということなのです。不眠や不安に包まれるのは、当然の結果だと思いますよ。人間の身体は約70%水でできています。その身体に気持ちを高める音を浴び続けている現代だからこそ、副交感神経優位のリラックスできる音を浴びる必要があると思うのです」

528Hzの周波数は、 音楽療法のひとつとしても注目されています。

528Hzの周波数が別名「愛の周波数」と呼ばれるのは、とくに自律神経の中でも心身をやすらぎモードに導く副交感神経を効果的に刺激しているから。
 ACOONさんのCDには、埼玉医科大学の和合治久教授がその効能についても詳しく解説されています。
 「順天堂大学医学部の小林弘幸教授とも、最近、ご縁ができました。というのも、小林教授がニューヨークの学会に行く途中の機内で、喘息になられたそうです。ANAとJALの国際線には、僕の曲が流れるチャンネルがあって、それを聴いたら喘息が止まったと、帰国されて教授からご連絡をいただきました。一緒に研究がしたいと申し出があったのです。順天堂大学の学生さんたちが加わってくれて、すでに犬では、41匹のワンちゃんたちに528Hzの音を聴かせて臨床実験をしています。
 実際に音を聴かせたらホルモンやオキシトシン(愛情ホルモンと呼ばれているもので、分泌によってストレスや恐怖心、不安が軽減されて、心地よい幸福感を得られるといわれている)の数値がどう変わるのかを測定してくれました」
 小林教授は論文発表もされて、528Hzが自律神経にどう影響するかこれからも注目していらっしゃるそうです。

音を聴くというより、音を体感してほしい。

CD『水森 WATER FOREST KUMANO』。和歌山県の地元で“採取”した里山の鳥たち、熊野の澤水の流れる音、棚田や谷川のカエルの音など、自然の音が随所にちりばめられています。

 ACOONさんの新しいCD『水森 WATER FOREST
KUMANO』には、サウンドスケープの収集地として、和歌山県田辺市中辺路町や西牟婁郡白浜町から〝採取〟した里山の鳥たち、熊野の澤水の流れる音、棚田や谷川のカエルの音など、地元の自然の音が随所にちりばめられています。
 サウンドスケープの担当はAWAYAの福島正知さん。自然界の音の収集家でもあり、照明やオブジェをつくるアーティストでもあります。今回、雅楽で使う篳篥に似た「八篥」というオリジナル楽器を用いた演奏で、よりプリミティヴな世界を醸し出しています。AWAYAの奥野裕美子さんは、「声」で参加されます。
 「2年に1回ある琵琶湖ビエンナーレ(滋賀県近江八幡市)でAWAYAさんと知り合いました。もう10年くらい前からここで演奏していて、ずっといつかは一緒に曲作りをしたいと思い続けていたのです。スタジオでの録音は、もう、自分たちが癒されて、何も進まない感じ(笑)。寝てばかりいましたね」
 ACOONさんは、この音の世界はヨガや瞑想、呼吸法などの下支えの音にもなるのではないかと思っています。
 「なかなか言葉では表現しにくいのですが、もう、ステージの前にお客様が座って音楽を聴く、そのスタイルは終わったのではないかと思うのです。参加している人が主役で、その空間(場)での音の体感が重要になってくるのではないかと。まさに音浴、音を浴びるイメージですね。「ゆの里」の場なら自分の身体の水と共振するような音の世界になると思うので、ぜひ、ここでやりたいですね」
 音は目に見ないけれど、かたちを見せてくれる。水に対して強く影響するからこそ、副交感神経のリラックスできる音で身体のバランスをとることが、現代の私たちに必要なのだと言うのです。
 空間に身を置くことで、音が身体と共振する。「聴くというより、体感です」と、繰り返し話すACOONさんの言葉の意味が分かってきました。

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